雑感など

内容の信頼性はこれを保証しない

人が潰されるとかそんなこと簡単に言わないでくれよ

あるとき、僕の学校の先輩(女性)が共通の知人(仮に吉田さんと呼ぼう)についてこのように言った。「彼女は社会に出たら絶対に潰される」。先輩の言い分はこうだった。先輩と吉田さんはともに生徒会に所属していた。そこでの吉田さんの振る舞いが先輩には…

食わず嫌いが『ノルウェイの森』を2日で読んだ

僕が村上春樹を初めて読んだのは小学校高学年のときである。当時、僕には第一次読書ブームが訪れていて(それまでに比べて)いろいろと小説を読んでいた。そんな折に村上春樹の新刊が発売されて大変話題になったので僕にしては珍しくミーハー根性で手に取っ…

「自意識の揺れを吹き飛ばしてくれるもの」

作家(経済評論家ではない)の村上龍がラジオでこんなことを語っていた。村上春樹が絶大的な人気を獲得したのは、彼の作品は「自意識の揺れ」を描いていてそれが世界中の人々の共感を呼ぶからだという。僕は村上作品はほとんど読んだことがないのでこの意見…

小説にしかない魅力はすべてミラン・クンデラが教えてくれた

最近、小説はどうしてなくならないのだろうという疑問について考えている。自分自身、小説が好きであるにもかかわらず、どうしてそのようなことを疑問に思うのか。それは、物語を伝える他の媒体(映画や演劇、マンガなど)に比べて小説にどのような表現上の…

「生きているうちに、許されている間に、善き人たれ」

忘れられない記憶がある。ある雨の日のことだ。 僕はそのとき高校生で、その日もいつも通り学校に行って、授業を受けて、それから電車に乗って最寄り駅まで帰ってきた。駅の構内を出ると、にわかにぽつぽつと雨が降ってきた。本降りになるまえにさっさと帰っ…

何があっても卑屈にだけはなるな

僕は、人が人に対して卑屈になっているのを見るのが何よりも嫌いだ。学校では、そんな場面を嫌というほど見てきた。生徒は大方みんな教師に対して卑屈だった。教師の言うことがすべて正しいのだから、叱られるときは自分が悪いのだ、そう考えていると思われ…

ショートショート「待合室」

シェードが降ろされている窓から初夏の活気に満ちた陽光が入り込んで、室内を舞っている埃の数々がキラキラと銀色に輝いている。壁の上方に設置されているテレビの画面はニュース番組を垂れ流している。微かに漂っている薬品のものらしい臭いによって、ここ…

凡人にできることは、「諦めないこと」だけ

つい先日、個人的な挫折を経験した。正直なところ、それなりに期待していたからガックリきた。たしかに、そりゃあ現実はそんなもんだろうという気持ちが大半であるが、心の片隅で自分はイケるのではないかという気持ちもあった。いや、片隅どころか割りと中…

認められる「自分らしさ」、認められない「彼女らしさ」

近ごろ、「自分らしさ」という言葉をよく耳にする。たとえば「自分らしく輝く」というように。上昇志向が限りなく皆無に近いブルーな僕に言わせれば、「自分らしく輝かない」というのはだめなのだろうかと思うが、それはともかく、この「自分らしさ」という…

芸術の価値

およそ芸術と呼ばれるものの価値は非常に曖昧なものである。文学にしろ美術にしろ音楽にしろ、定量的にも定性的にも、その作品がいかに優れているかを客観的に分析し証明することは困難である。あるいは不毛ですらある。 僕がどれほどベートーヴェンの音楽を…

本当にやりたいことを判断できるかもしれない方法

若い人には、自分が「本当にやりたいこと」が何なのかが分からないという人が少なからずいると思う。僕はあまりそういうふうに思ったことはない。実際にそれをやれるかどうかはともかくとして、人生においてどうしてもこれをやりたいんだということは割りと…

大きな主語に気をつけよう

ものを言ったり書いたりするときに、ついつい「大きな主語」を使ってしまうことがある。「大きな主語」とは、たとえば「男は」とか「女は」とか「日本人は」といったように、ある特定の個人や個物ではなく、抽象的な概念を指す主語のこと。 大きな主語を使っ…

社会から認めてもらうためには眉毛に気をつけなければいけない

実は僕には妙な癖があります。それは、眉毛を指で引っ張って抜いてしまうことです。調子の良いときは(?)、四、五本、一気に抜けることもあります。ほどほどにしないとそのうち眉毛がなくなってしまうのではないかと時々思いますが、あまりに呆気なく抜け…

芸術は「自己」の表現なのか?

芸術は「自己表現」だとよく言われる。 作者の頭や心のなかの思考や想念、イメージといったものが具体化されているものが芸術だという理解がその根底にあるのだろう。それはあるていど真実だと思う。実際、ピカソが描いた絵は「何を」描いていようがピカソ的…

記事投稿の方針を変えてみる

僕はこれまで、だいたい3,000字から6,000字くらいまでの記事を投稿してきた。これは意図的である。まず下限については、3,000字に満たない記事はまだ内容的に思考が充分に深化していないと思っているから設けている。上限はもっと単純で、さすがに6,000字を…

ブレイクスルー

このところずっと、日常に漠然とした閉塞感がある。 まるで、窓がひとつもない真っ暗な部屋でぼんやりとテレビを見るともなく見ているような感じがする。何も見えないのでもないが、何もかも見えるのでもない。何もしていないのでもないが、何かを積極的にし…

「誤解を恐れずに言えば……」というとき、誤解するのは誰?

「誤解を恐れずに言えば……」という表現をたまに見かける。この表現でワンクッション置いた後は、たいてい物事をかなり単純化して述べることが多いので、誤解を恐れずに言った文だけを読めば著者がその本で書きたかったことの半分くらいがわかったりする。 だ…

好きなお菓子を紹介します

その人のことを知りたいと思ったときは、まず手始めに何が好きかを聞くのが定石です。別に何が嫌いかでもいいですし、むしろ嫌いなもののほうがその人のパーソナリティを如実に表すことが多いように思いますが、でも嫌いなものの話をしても楽しくないですし…

天才は孤独だと言われるのは何故か

歴史上、天才と称される人たちの伝記をひもとくと、示し合わせたように「孤独な幼少期/青年期」を描いた章がある。そのせいなのか、「天才には必ず孤独な時期がある」とか「孤独が天才を生む」といった言い方がよくなされる。ひょっとすると、これらを真に…

オリジナリティとリーダビリティの境界で

ブログの記事の内容というのは、個性的でブッ飛んでいるのが良いとよく言われている。僕としても、時事問題や文化芸術などについて調べた情報を整理してわかりやすくしてある記事よりも(もちろんこれはこれですごく便利)、たとえば時事問題なら具体的な出…

「さて……」

以前、ある人がこのようなことを言っていた。 「歴史の授業ってよくよく考えてみるとすごく残酷だよね。だって、ものすごい数の人が死んでるのにどんどん先々進んでいくんだから。~~年に~~事件があって~~という人が殺されました。ハイ、それで……って、…

名文とはなんだろう

読書の楽しみについて語られる文章においてよく目にするのが、「文章(文体)を味わう」というものだ。その意味するところは、なんとなく「感じる」ことはできても、「理解する」までたどり着くことは難しいのではないだろうか。 「文章を味わう」というのは…

ショートショート「お客さん」

僕の家はいつもけっこうな散らかりようだった。 母が物を捨てたがらない人だったので、本来ならばゴミとして家から追い出されるべき数々の物たちが住み着いていたのである。裏紙を裁断したメモ用紙や、なにかの景品でもらったボールペン、シャーペンなどの細…

ライターズ・ブロックから考える、文章を書くことの意味

ライターズ・ブロックという言葉がある。すでにご存じの方には、説明する必要はないと思う。ご存じでない方は、それはとても幸運なことなので、知らないままでいたほうがいい(日本人が肩こりになるのは、日本語に「肩こり」という言葉があるからとかいう話…

自信がないなら死ぬしかない

僕は長いあいだ自分に自信がなかった。 人生においてなにかを継続したことがほとんどないせいだったと思う。小学生ころは友だちと遊ぶことばかりしていたし、中学生はみんな部活に入るなか僕だけ帰宅部だったので、友だちと遊ぶことすらなくなった。それで何…

責任について―恩寵としての責任、責任としての恩寵

人が生きていくうえで、責任というものはぜひとも必要だろうか。 それとも単なる重荷に過ぎないのだろうか。 そもそも責任とはなんだろうか。 僕のお気に入りの辞典『学研国語大辞典』は次のように定義している。 ①まかされて、しなければならないつとめ。任…

習慣についての覚え書き

習慣の大事さについての議論は各所でたいへん喧しく行われている。同時に、習慣をもつことの難しさについても、そこかしこで論じられている。習慣というものがもつ意味がそれだけ大きいということだろう。僕もいくつか習慣をもっているが、それらの習慣がな…

部分と全体―人生の算数についての一考察

”全体は部分の総和にあらず”という言葉をたまに目にする。たしか、外山滋比古『思考の整理学』で紹介されていた言葉だ。インターネットでもよく見かけ、”全体は部分の単なる総和以上のものである”とか、バリエーションはいろいろあるけれど、どれもだいたい…

気が利くひと

あなたにも、気が利く人と聞いてすぐに思い浮かぶ知人が何人かいると思う。僕もそういうひとが何人かすぐに思い浮かぶ。気が利くというのはどういうことか、ちょっとあいまいだけれども、たとえば、食事の席で空いたグラスを見つけて飲み物を注いであげると…

芸術が人を救うわけないじゃん、という話のはずだった

これまで、僕は、生活のありとあらゆる領域で、感情というものの価値を認めていなかった。たとえば、映画を見てに”泣けた”という人や、小説を読んで”共感できた”という人たちが、どちらかと言えば気に入らなかった。 僕は、むしろ思考を重視していた。映画を…

梅の名所、京都の「城南宮」に行ってきた(写真2枚だけ)

梅が好きだ、桜よりも。 梅の、地味さが好き。桜ほどにはたくさん花をつけないし、木も比較的こぶりだ。それから、木の形も好き。桜はどちらかと言うと、木の王道って感じの形をしている。根と幹が太くて、真っ直ぐに伸び、ほぼ円形に枝を広げる。けれど、梅…

存在することの習慣

人は、生きているだけで他人を傷つけるものだと、よく言われる。 ほんとうにそうだと思う。 僕は、これまでの人生で、いじめをしたことはないとずっと思ってきたし、たぶんそのことを誇らしげに公言もしてきた。だけど、傲岸な僕は気づいていなかったのだ。…

The Tempo of Living(あるいは:ピアノ上達法)

ピアノを上達するために重要なことが二つあると思う。 一つは、毎日、欠かさず同じ練習を繰り返すこと。 もう一つは、毎日、違う練習をすること。 一見すると背反しているように思えるが、実はこれ以上の真実は(僕にとっては)ない。実際に、僕はこの方法を…

ショートショート「母子の速度」

日曜日の昼下がり。生産的に過ごすことができた午前中に満足しながら、腹が空いてきたことを意識する。実に自然な、空くべくして空いた腹だ、と僕は思う。別段、身体を動かしたわけではない。精神的な重労働をしたわけでもない。しかし心地よい活動はそれだ…

読書感想文:遠藤周作『沈黙』

沈黙 (新潮文庫) 作者: 遠藤周作 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/10/19 メディア: 文庫 購入: 26人 クリック: 337回 この商品を含むブログ (264件) を見る 映画化をきっかけに読んだ。僕は文学が映画化された場合は必ず原作を読んでから観に行く。大…

意味の世界は嫌いだ

何となくタモリさんのWikipediaを読んでいたら、「『意味性』のある音楽は苦手としており……」という記述があった。(タモリ - Wikipedia)ちなみにその記述の出典はここ(ほぼ日刊イトイ新聞 - はじめてのJAZZ。)。 この記事を読んで僕は思わず膝を打った。…

楽器が演奏できるのはいいことだ

僕は、ほんの他愛もない趣味程度に、かじる、よりは、なめる、といったほうが適当な程度にピアノを嗜んでいる。やっていて哀しくなるくらいに下手くそなのだが、練習しなければ下手くそ以前の屑で永遠に停滞したままなので、毎日少しだけでも練習するように…

週刊印象批評:第5回「山下澄人『しんせかい』」

しんせかい 作者: 山下澄人 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/10/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る みなさんお久しぶりです。週刊印象批評第5回です。 二週間も連続で休載してしまって(正確には、サボってしまって)、申し訳ありません…

追憶の海に溺れないために

人は事実をそのままに記憶することはできない。だから、思い出は人の数だけ存在する。そして、それゆえに思い出は美しい。そう、思い出の美しさ、すばらしさを口を酸っぱくして説くことは簡単だし、実に気分がいい。なぜなら、過去に価値を見出すことができ…

読書感想文:芥川龍之介『河童・或阿呆の一生』

とあることがきっかけで、芥川龍之介の晩年の作品群が収められている文庫を手に取った。芥川といえば『羅生門』とか『蜘蛛の糸』とか『杜子春』とかが有名で、後期の作品といえばマニアしか読まないものだ。そんな「つまらない方の」芥川ばかりが収められて…

ことばと思考

「言語は存在の家である」というのはハイデガーの言葉だ。 昨今の言語学/言語哲学がもたらした知見によって、言語とは人間の思考を表現する道具である以前に、そもそも言語こそが人間の思考を成り立たせているということが明らかとなった。 これは考えてみ…

週刊印象批評:第4回「綿矢りさ『私をくいとめて』」

私をくいとめて 作者: 綿矢りさ 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2017/01/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 皆さん、あけましておめでとうございます。週刊印象批評第四回です。 誰が見ているのやらわからないこの「週刊印象批評」で…

何かと武装をしたがる人

先日、ツイッターで回ってきた言葉で、読書をしたり映画を観たりする人間は全体の2~3%しかおらず、俺たちは異端児なんだぜみたいな、ことが載っていたのだが、なんだか自分を特別視して勘違いしてる人々はいるのだな、と感じた。そんな感じになってしまって…

2017年にやりたいこと

今週のお題「2017年にやりたいこと」 がんばって書こうと思ったけれど、どうしても文章にならないので箇条書きで。 読書 日本文学(近代)の有名どころを抑える できれば古典も(『平家物語』とか) 海外文学の有名どころを抑える 同時代の海外文学にも手を…

2016、断章

「さびしさは鳴る」。それを痛感しつづけた一年だった。 四月から新しい環境に移って、慣れ親しんだ人たちのあいだで温かい毎日を過ごす生活は終わった。新しい環境には、知らない人びとしかいなかった。それはこれといって辛いものでもなかったが、さびしさ…

最近の小説について

このあいだ、久々に本屋に立ち寄った。 次回の「週刊印象批評」で取り上げる作品を探そうと思って、新刊コーナーを物色しに行ったのである。 僕は、近頃の日本文学の動向にはちっとも明るくないから、平積みされている本の作者たちでも名前を知っている人は…

週刊印象批評:第3回「宮下奈都『静かな雨』」

静かな雨 作者: 宮下奈都 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/12/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 皆さんこんにちは。週刊印象批評第三回です。 今回は、ピアノ調律師の青年が主人公の『羊と鋼の森』で2016年本屋大賞を受賞した…

取り柄がないのは悲しい

僕は子供の頃から、特に何かをやるでもなく生きてきた。 そのときそのときは、それなりに楽しかったし、その点は別の後悔していない。たくさん面白い友達と出会って刺激を受けてきて、そういうわけでかろうじて今の自分がある。不思議といつも友達には恵まれ…

週刊印象批評:第2回「森見登美彦『夜行』」

夜行 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2016/10/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (12件) を見る 皆さんこんにちは。週刊印象批評第二回です。 今回は、予告通り森見登美彦さんの『夜行』を取り上げて批評していきます。 まず、読…

週刊印象批評:第1回「印象批評とは何か」

ネット上には、書評ブログがたくさんあって、その中にはとても一般人の手になるとは思えないような(実際、名前を隠した在野の人も多いのかもしれない)、レベルの高いブログもあります。 僕自身、そういった類のサイトにいつもお世話になっています。僕の場…